家族信託を利用することにはどんなメリットがあるのでしょうか。また、家族信託には注意すべきデメリットはあるのでしょうか。

家族信託のメリットとデメリットをそれぞれ3つのポイントで説明します。

家族信託のメリット

家族信託には3つのメリットがあります。

  1. 自分と家族の生活を守ることができる
  2. 自分と家族の希望に沿った財産管理の実現
  3. 柔軟な相続対策と税金対策ができる

自分と家族の生活を守ることができる

加齢により体調のリスクを抱えると、預金や不動産などの財産を管理することが難しくなります。生活費や医療費の引き出しや、不動産売却、賃貸借契約など、当たり前にできていた自分の財産管理が思うようにできなくなってしまうのです。

認知症になると、さらに財産管理が難しくなります。不動産を売却して老後資金を作りたくても、売買契約も難しくなるのです。生活費や医療費の引き出しも、思うようにできないことでしょう。生活費や医療費の出し入れや、契約、売買などは自分と家族の生活に直結します。「できない」「難しくなる」ということは、生活も困難になるということとイコールです。

家族信託によって信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を任せておけば、自分が「できない」「難しい」という状況でも、家族が代わって財産管理できるようになります。自分と家族の生活を守ることができるのです。

家族が財産を管理することによって、判断力が低下したときに詐欺などに巻き込まれるリスクも軽減できます。財産犯罪から自分と家族の生活を守ることも可能なのです。

自分と家族の希望にそった財産管理の実現

老いによって病気や認知症になったときに、代わって財産管理をしてもらう方法としては、成年後見人制度があります。成年後見制度を活用すると、裁判所の監視のもとで弁護士や司法書士などが財産を管理してくれるのです。

ただ、成年後見制度を活用すると、柔軟な財産管理や、本人と家族の希望する財産管理ができないという問題点が指摘されています。

成年後見制度における財産管理の特徴は「本人のためになるか」です。

成年後見制度の財産管理で優先されるのは、本人や家族の希望ではありません。本人や家族がいくら希望しても、「本人にとってマイナスである」と判断されれば、財産を動かしたり、売買契約を進めたりできないのです。財産の持ち主であった本人や家族の強い希望があっても、成年後見制度で希望に沿う財産管理を行うことは難しいという現実があります。

成年後見制度は、柔軟な財産管理という点より、財産を適切に管理商品、かつ、マイナスにしないように守ることに重点を置いているのです。家族信託は本人や家族の希望を盛り込んで行う契約になります。財産の持ち主である本人や、本人と人生を共にする家族の希望を実現しやすいというメリットがあるのです。

柔軟な相続対策と税金対策ができる

家族信託を使えば、柔軟な相続対策と税金対策が可能だというメリットもあります。

代表的な相続対策に遺言があります。遺言書で指定することにより、財産の所持者が望む相続を実現しようという方法です。ただ、遺言書には「相続後の財産を処分されてしまう可能性」というデメリットや、「二次相続対策ができない」というデメリットがあります。

不動産などの財産を相続後も運用して欲しいと願っても、相続財産にいろいろな注文をつけることは難しいことです。家族信託によって家族との契約というかたちで管理や運用を約束すれば、より柔軟な相続が実現可能になります。

遺言書では第一の相続の次に発生する相続(二次相続)について指定することは難しいというデメリットもあるのです。配偶者が相続したあとは、財産を管理運用しながら孫へ受け継いで欲しいなどの希望がある場合、自分の遺言書だけでは難しいという現実があります。関係する推定相続人に次々と遺言書を作成してもらわなければならないなど、手間と費用がかかります。

家族信託によって契約というかたちで行えば、遺言書などの従来の相続対策では難しい先々の相続まで対策が可能なのです。

家族信託で相続対策をすることにより、相続時に揉めて税金の負担を軽減する特例が使えなくなることも防止できます。家族に財産を管理運用してもらいながら、長期を視野に入れた相続税対策も可能になるため、家族信託は税金面においてもメリットがあるのです。

家族信託のデメリット

家族信託には3つのデメリットがあります。

  1. 法律の専門家の助力と費用が必要である
  2. 税務処理がやや困難である
  3. 家族信託が向いていないことがある

法律の専門家の助力と費用が必要である

家族信託は一種の契約です。家族信託を結ぶためには、財産を持つ本人や財産を管理する家族の要望や希望を盛り込んだ「オーダーメイドの契約書」を作成しなければいけません。ニーズに合わせた世界のたった1つの契約書を作るのです。

家族信託の契約や手続きをするためには、法律の深い知識を持った専門家の協力が必要になります。しかも、家族信託の契約をサポートする法律の専門家は、信託や相続などの実務経験がないと、希望に沿ったオーダーメイド契約書の作成が難しいという特徴があるのです。法律の専門家の中から信託の実務経験と知識を持った専門家を探すという手間があります。

専門家のサポートを受けるということは、そのぶんだけ費用が必要になってしまうこととイコールです。

税務処理がやや困難である

家族信託の運用により収益が上がると、税金のルールに沿った申告などの手続きが発生します。家族信託をしたことにより、しなかった場合よりも税金面の手続きが増えてしまうのです。

家族信託の税務処理をサポートしてもらう場合は、税理士などの費用が必要になります。税務処理の面でも費用や労力が必要だというデメリットが考えられるのです。

家族信託が向いていないことがある

家族信託を使うことで柔軟な相続対策や財産管理が可能になります。ただ、財産の管理や相続という点において、家族信託は万能の方法ではありません。家族信託でもできないことがあるのです。

家族信託で相続対策をすることによって、長期を視野に入れた相続税対策ができますが、家族信託そのものに相続税を軽減する税金的特典はありません。家族信託の手続きをしただけで税金の負担をおさえることは難しいと考えられます。家族信託を使い、継続的に財産の管理や運用をすることによって、家族信託の真のメリットが得られるのです。

家族信託で相続対策をしても、家族信託の内容から漏れた財産があると、遺産分割協議などを経なければならないという特徴もあります。家族信託では、契約内容に含まれていない財産までフォローできないのです。

最後に

家族信託のメリットとデメリットはそれぞれ3つあります。

家族信託を使うときは、財産管理や相続について「どうしたいか」という希望をしっかり固めることによって、メリットをより活かすことが可能です。デメリット対策もできます。

まずは、財産管理や相続について、自分や家族の希望をリストアップするところからはじめてみてはいかがでしょう。希望が固まらないという場合は、家族信託を得意とした専門家に相談し、計画を立てるところからスタートしてみましょう。