家族信託の手続きの流れ

家族信託の手続きは、大きく4つのステップにわかれます。

  1. 家族信託の契約内容を決める
  2. 契約内容を書面にまとめる
  3. 家族信託の公正証書を作成する
  4. 不動産の名義変更や信託口座の開設

家族信託の契約内容を決める

家族信託の手続きのスタート地点は、家族信託の契約内容をまとめることです。

家族信託では、画一的に契約内容を決めることはありません。財産管理・運用・処分について、財産の信託を希望する人と管理を担当する家族の希望や事情にあわせてオーダーメイド式に契約内容を決めることになります。

  • 何を目的に財産管理・運用・処分したいのか
  • どの財産を家族信託の契約に盛り込みたいのか
  • 誰にどのような方針で財産を管理して欲しいのか
  • 財産を将来的にどうしたいのか
  • そのほかの自分や家族の意見や希望

以上の点を明確にすることが重要です。

5つの点は家族信託の心臓であり、脳であり、根っこになる大切な存在になります。5つの点を明確にしておかないと、せっかくの家族信託のメリットが活きません。法律の専門家を交えて、納得するまで話し合いましょう。

契約内容を書面にまとめる

家族信託の契約内容が決まったら、「信託契約書」という書面にまとめます。信託契約書の内容ひとつひとつが、話し合った上で決めた内容に沿っています。内容について疑問や不安がある場合は、この時点で解消しておくことが重要です。

家族信託の公正証書を作成する

作成した信託契約書をもとに公正証書を作成します。公正証書にすることにより、より安心して家族信託の運用ができるため、実務家の多くは公正証書をおすすめしています。

公正証書を作成する前段階で、公証人という法律の専門家から二重チェックを受けることが可能です。公証役場という機関が後ろ盾になることにより、後から揉めることも防止できます。続く口座開設の手続きをスムーズに行うことも可能なのです。

不動産の名義変更や信託口座の開設

家族信託の契約内容に沿って不動産の名義変更や信託口座の開設を行います。

不動産の名義変更は法務局の管轄です。不動産の手続きは非常に難易度が高いものなので、家族信託の実務経験のある司法書士に相談してミスなく行うことをおすすめします。

信託財産にお金がある場合は、信託口座の開設が必要です。信託用の口座がないと、財産を管理する人の個人的な財産と混ざってしまいます。信託財産はわけて管理することが必要なので、信託口座を開設し、信託口座内で管理するのです。信託口座の開設後に、管理すべき財産であるお金を送金する流れになります。

信託専用の口座(信託口)は、すべての金融機関で開設できるわけではありません。事前に信託口の開設が可能か確認する必要があります。司法書士などに家族信託の手続きを依頼すれば、信託口の開設までサポートを受けることが可能です。

家族信託にはどのくらいの費用が必要なのか

家族信託を検討する場合、どのくらいの費用が必要かという不安があるのではないでしょうか。

家族信託の契約はオーダーメイド契約という性質が強いため、契約の内容や財産などにより費用が変わってくるという特徴があります。

また、信託財産の中の不動産の有無によっても変わってくるのです。信託財産の中に不動産が含まれた場合の方が、費用相場は高めになります。

不動産がない場合の相場 30~70万円

不動産がある場合の相場 50~100万円

費用について詳しく知りたい場合は相談や見積もりを利用する

家族信託の財産の内訳や契約内容は家族それぞれです。自分の希望する家族信託を契約するためにはどれくらいの費用が必要なのか、司法書士などの専門家にあらかじめ相談しておくのも良い方法になります。見積もりを取得して、家族信託の検討に役立ててみてはいかがでしょう。

家族信託と成年後見人制度ではどちらが費用をおさえられるのか

家族信託と成年後見人は、ともに認知症などのときの財産管理方法として使えます。費用の面でもよく比較される方法が家族信託と成年後見人なのです。

成年後見人の費用相場は、月額2~6万円になります。年額にすると24~72万円ほどが相場です。最終的に裁判所が判断し、後見人である弁護士や司法書士が報酬として受け取ることになります。家族信託の相場は30~70万円、50~100万円なので、成年後見人の方が費用をおさえられると思うかもしれません。

家族信託の場合、家族信託の手続きをするときに相場金額が発生します。契約後は家族が財産管理・運用・処分を担当するため、報酬を支払う必要がないのです。成年後見人は毎年24~72万円という相場費用が発生します。2年目だろ累計で48~144万円。3年目だと72~216万円もの費用が発生する計算になります。

総合的に見ると、家族信託の方が費用をおさえることができるのです。